21の娘が結婚に幸せな願望を抱くのも無理はない。
結婚は華々しい。
娘は先々月にサークルでお世話になった先輩の結婚式に御呼ばれし、ちゃっかりドレスアップなんかして意気揚々と出席した。
よい結婚式、正確には3次会だった。(サークル陣の人数が多すぎて披露宴、式には出席できなかったのだ。)
花婿はドラマでもよく見る、花嫁に向けての手紙を朗読し、花嫁は当たり前のように綺麗な大粒の涙を落とした。
まさに結婚。しかも現代的でおしゃれだ。

しかし娘はその二人が、周りの人間が、大変滑稽に感じた。
滑稽だ。
というか恥ずかしくないのか。
酒を飲ん日本人に似合うわけもないドレスをまとって、愉快でならない。
正確に言うと幻滅した。結婚というものに。

なんて結婚とは稚拙で単純明快で、茶番なのだろう。
一人の男と一人の女の恋愛は、どうしてゴールがあるのだろう。
なぜゴールに憧れるのだろう。

しかしそのように高慢に考える無知な娘も結婚に憧れを抱いている。
娘は今恋をしていた。
2歳年下のサークルで知り合った男だ。
彼はとても良い表情をもった男だった。
性格も真面目でユーモアがある。たまに見せる弱さ、自己の中の葛藤も娘は好いていた。娘にとってはじめての恋人と呼べる存在でもあった。

生きていくなら、この人の隣で、と思っていた。
指輪を欲しがった。何か証が欲しかった。何の証かといわれるとうまく答えられないが、娘は彼のものだ、彼もまた娘のものだという、幼稚じみた独占欲とも言い切れる。
結婚したい、とも思うことがあった。
この人と幸せな家庭を築きたい、という21歳の若者らしい従順な思いが娘にはあった。子どももほしいと思った。娘は恋人ができてから子どもが好きになった。自分でもそれには大変驚いていた。暇を見つけては子どもの名前まで創造してしまう始末。

娘は普通の娘だった。
恋人の彼も、普通の青年である。




二人は今、まさにこのときを恋している。
なんて浅はかな現実だろう。
なんて浅はかな未来だろう。

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